Texts

Snow crystals

人間が自然の一部であるということは、それが動詞的である時に実現し名詞的である時に観察される。人の自然に対する驚きや喜びが、私にとって自然と同じように神秘的に感じられるのは、そのような状態の人間が自然と響き合って一体化しているからなのかもしれない。

石川県加賀市で拝見した中谷宇吉郎さんの雪の結晶に関する研究のプロセスは、自然の不思議さや純粋な好奇心に駆動されているようだった。雪の結晶を分類し、さらに人工的に雪を作ってみることを通して神秘に手を伸ばそうとする。それはまるで天籟に耳をすませ新しい言葉を生み出そうとしているようにも見える。

”不思議な形の結晶も、低温室のなかで、人工的につくれるようになった。しかしそれは天然の条件がわかったので、その真似をした、というだけである。神秘は依然として彼方にある。” 

神秘は彼方にある。淡々と観察を続けて分類したり、架空の形象を生み出して物語にしたりと分野によってアプローチは異なるが、自然に対する驚きや喜びというところは通底しているようにも思える。Sense of Wonderという言葉が有名だが、私はその心の神秘的な揺れうごきを Muune(ミューン)と呼んでみることにした。天籟を前に私たちのMuuneは響き合えるのかどうか。

Akari Fujise